「伊田の話、聞いたか?サッカー部のエースのことフッたって」
新学期の教室を静かに賑わしていた噂話は、鈍器に形を変えて、俺の横っ面を思いきり殴った。
頭の中がグラグラと揺れる。
俺はそれに戸惑った。
どうして俺はショックを受けている?
杏奈のことは、もう終わったんだ。
今更気にするなんて、馬鹿げてる。
だから俺は、鳴海先輩を探した。
もう帰ってしまった後かもしれない放課後の校舎を、何かに追われるように歩き回った。
早く鳴海先輩に手を掴んでもらいたい。
俺を、鳴海先輩という人の中に閉じ込めてほしい。
何も見えないように。
何も聞こえないように。



