落ちてくる唇を、避けることをしなかったのは、そうできなかったからなのか、……欲しかったからなのか。
それは、鳴海先輩?
それとも、俺が男だという証明?
思った通り柔らかなそれは、けれど意外にも、冷たかった。
一つのキスの後、俺達は堤防を後にした。
鳴海先輩の手に引かれるようにして歩く。
けれど俺の手のひらは、鳴海先輩の細い手を、しっかりと包んでいた。
「親、いつも遅いんだ」
自分の手で鍵を開けた先輩の自宅は、先輩の言う通りに人の気配がなく、薄暗かった。
鳴海先輩の部屋は二階に上がってすぐで、中の様子は意外にもシンプルだ。
俺が想像していた女の子の部屋とは、かけ離れている。
でもそれがむしろ、鳴海先輩らしいと思った。



