外見も、内面も。
杏奈に幻想を抱いて、勝手に失望して。
俺の恋愛って、何だったんだ?
「早く大人になりてぇ」
虚しい言葉は、空に吸い込まれて、消えるはずだった。
けれど隣には鳴海先輩がいて、俺の言葉をきちんと掴み取ってくれる。
「雄ちゃんは、男の人だよ」
大人になりたい、と言ったのに、鳴海先輩は俺の真意を汲み取ってくれた。
俺が本当になりたいのは、大人であり、男なのだ。
俺はたぶん、彼女に慰めてほしかったのだと思う。
俺のことを、きちんと見てくれる、唯一の女性だから。
ふいに視界が暗くなる。
反応するより早く、先輩の長い髪が落ちてきた。
最初、何が起きているのか全く理解できなかった。
顔の両側には先輩の細い腕が見えて。
先輩が、俺に覆いかぶさっているんだって認識した瞬間、恥ずかしいくらいにうろたえた。



