夏休み前のテストは散々だったが、放課後の連日の追試も、ようやく今日で終わった。

これで心置きなく夏休みに入れる。

軽い足取りで、教室に鞄を取りに戻る。


「えー!?杏奈、まだ返事してないの!?」


細く開いたドアの隙間から、教室の中の声が漏れてきた。

俺はドアに延ばしかけていた手を、その場で固まらせる。

中に、杏奈がいるのか?


「ちょっと、声大きい……」


慌てながらも抑えた声でそう制するのは、間違いなく杏奈だ。

話題は例のサッカー部のエースのことだ。

……まだ、付き合っているわけじゃないんだな。

俺は胸を撫で下ろす。


「迷ってるの?」


誰かのその質問に、ゆるんでいた心臓が、再びきゅっと縮む。

杏奈は、どう答える?