鳴海先輩は、俺のことを男として見てくれるっていうのか?

信じられない気持で、鳴海先輩の綺麗な顔を食い入るように見つめてしまう。

変わりものだけど、この学校で一番の美人が、そう言ってくれている。

だったら、少しくらいは自信を持ってもいいのか?


「ありがと、先輩」


鳴海先輩は、俺を元気付けてくれようとしたのだろう。

彼女は美人のくせに、優しくて気配りができるからやっかいだ。

こんな人がいつも傍にいたら、間違いなく惚れてしまうだろう。

こんな人が彼女になってくれたら、きっと幸せだ。

ふと、あの日の杏奈の顔を思い出す。

怒ったような悲しいような、何か言いたげな表情。

何を考えているのかわからない杏奈なんかやめて、素直な鳴海先輩を好きになれたら、楽なのかもな。

その虚しい仮定に、俺は薄く笑った。