「早く紹介してよねー……って、あれ?」


雄平の教室の方を振り返った美菜が、何かを目にしたらしく、足を止めた。


「杏奈の彼氏、だよね?」


廊下の先に目を向けると、教室から出てくる人影は、確かに雄平だ。

そしてその足の向く先には、片手を上げて雄平を迎える人が一人。

長い髪を持つ、ほっそりとした人。

女の子、だ。


「げ、鳴海先輩じゃん」


美菜が、とても好意的とは言えない声を上げる。


「美菜、知ってる人?」と鈴音。

「名前だけはね。ていうか、二人とも知らないの?北高のマドンナにして、北高一の魔性の女、鳴海祥子のこと」

「……は?」


思わず、ぽかんと口を開けてしまった。

“マドンナ”にしても“魔性の女”にしても、時代錯誤もいいところだ。


「もしかして杏奈の彼氏、あの先輩に目をつけられた、とか?」


鈴音が心配げに声を上げる。

それが事実なら、一大事だ。