授業中に抑え込まれていたエネルギーが、これでもかと解き放たれる、休み時間。

右では男子が取っ組み合い、左では女子が大音量のおしゃべり。


「雄ちゃん」


俺のことをそう呼ぶのは、母親以外では一人だけ。

三年生の鳴海祥子先輩だ。

なぜか俺にかまってくる。

やっかいなことに、めちゃめちゃ美人だ。

目元がちょっとだけ、杏奈に似ている。


「先輩、何してんの?」


ここは一年生の教室が並ぶ、校舎の四階。

三年生がわざわざ上ってくるのは珍しい。


「加藤ちゃんの付き添い」


そう言って視線を向けた先には、同じく三年の女子。

同じクラスの加藤瞳の姉ちゃんだ。