杏奈の様子は、明らかにいつもと違った。

それなのに俺は、自分の感情ばかりに気を取られ、それをないがしろにしてしまった。

俺はたぶん、どこまでも、あのエースに劣っている。

そう思うと、ただ情けなかった。

俺は、杏奈を好きでいる資格すらないのかもしれない。

杏奈が俺を男として見ないのも、ごく自然な結果だ。

それなのに、俺は求めてしまう。

俺を見てくれ。

俺のことだけを。

俺という、男を。

杏奈のことをこれほどまでに強く思っている俺のことを。

俺の想いに、気付いてくれよ。

受け止めてくれよ。

俺のことをあの笑顔で、あの目で、見つめてくれよ。