好きな女が他の男を見つめるのを見るなんて、何の拷問だ。
杏奈はゲームの展開を見守っていたに過ぎないのかもしれないけれど、俺には、息をひそめて彼の一挙一動を見つめているようにしか見えなかった。
ふいに、杏奈の顔に控えめな笑みがこぼれた。
ほぼ同時に響くホイッスルの音と、歓声。
はっとしてグラウンドを見ると、ガッツポーズを掲げるエースに、抱きつくチームメイト。
さっきまでコートの中を行き来していたボールは、釣り上げられた魚みたいに、ネットにからまって動きを止めていた。
エースは、杏奈に向き直って、拳を突き上げる。
誇らしげに、大きな笑顔を咲かせて。



