これを境に、杏奈は俺をからかったり、じゃれついたりするようになった。

甘んじて受けて良いものかと、一応は悩んでみた。

でも、これでいいという結論に至った。

もっとも、今は、という限定つきで。

どんなにプライドを振りかざしてみても、俺はまだ体も小さいし、声も高い。

“雄子”というあだ名が、悲しくもぴったりだ。

けれど、俺は男だ。

成長期という心強い味方と出会うことになっている。

だからそれまでは、今のこの関係を楽しもうと思えた。

実際、楽しいんだ。

杏奈が心を許して笑いかけてくれることも、馬鹿なことを言い合うのも、何もかも。

だからもう少しの間このままでいい、そんなぬるま湯の心地良さに甘んじていた。

いつかの誓いの元で精進するのを怠り、それは結果的に、未来の俺に丸投げしただけだ。