そのネーミングに思いのほか満足したのか、杏奈は怒りを引っ込めて、ニヤリと笑った。
「雄子ちゃん」
もう一度そう呼ばれた時、俺は怒ろうとした。
でもそれは、シュンと音を立ててしぼんでいった。
なぜなら、
「おい、撫でるな」
杏奈が俺の頭に手を乗せて、子どもをあやすように撫でていたのだ。
一応は抗議しつつも、それは建前だ。
杏奈が俺に触れている、その事実に有頂天だった。
この瞬間、俺のちっぽけなプライドは、もうどうでもいいやと吹き飛んだ。
杏奈が自分から俺に触れてくれるなら、俺は“雄子”でも何でもいい。
カッコワルイけど、頭を撫でられるのっていいもんだな、なんて、思ってしまった。



