しかしそれを、杏奈はひったくるようにして奪った。
「貸して。もう時間ないから」
長い手が黒板を行き来して、綺麗に吹き上げられた。
そのことが俺のプライドをズタズタに切り刻んだことに、杏奈はまるで気付いていない。
無性に腹が立った。
「ふん。デカ女」
言ってから、やばい、と思った。
空気がピシリと音を立てる。
「……は?」
声の低さがそのまま、事の深刻さだ。
杏奈の背中に、静かな炎が立ち昇る。
ゆっくりと振り返った杏奈は、ずかずかと俺に迫ってくる。
そして俺を思い切り見下ろすと、たった一言、けれど爆発的な威力を持つ言葉を、放った。
「チビ雄子」



