この気持ちは何だ?
生まれたての感情は、ざわざわと胸の内側で騒がしい。
温かく優しくもあり、刺々しく激しい。
彼女を見ると、心にポッと灯がともる。
そのぬくもりを感じながら、ずっと目で追っていたいのに、そうしようとすると胸のあたりが圧迫される。
彼女に近付きたい、けれど何かがそれを妨げる。
目に見えない力に、支配されているようだった。
ガキの俺は、こんな感情を知らない。
でも、一つだけ確かなことがあった。
俺は大人に、男にならなくてはならない。
強がっている彼女に、ホッと一息つかせてあげられるような、デカい人間にならなければならない。
いつまでも子供のままではいられない。
小さな拳をきゅっと握り、俺は心の中で、まだ名前も知らない彼女に誓った。