中学一年生、春。

柄にもなく、俺は“ひとめぼれ”をした。

その頃の俺は、自分でも認めざるを得ないほどにガキだった。

体は人より二回りも三回りも小さくて、成長を期待されて仕立てた制服のブレザーは誰よりブカブカだった。

生意気な口をきき、女子をからかって楽しんでいた。

でも、それでいい。

大人になるのはまだまだ先だ。

この先、嫌でも大人になるのだから、中学生の今はまだ、バカをやって笑っていればいい。

そう、思っていたのに。

入学式の朝、教室で初めて見た一人の女子に、俺の心は見事に奪われた。

整った顔立ち、大人びた表情、ちょっとキツい口調。

そのどれもが、俺の目と耳を捉えて離さない。