振り返ったその人は、逆光の中でも輝きを失わない。
「元気ないね……伊田ちゃん」
その笑顔は、あたしを丸ごと、包んでくれる。
すがりたくなる。
「美菜は……?」
「ほっぺ切れてたから、消毒して、絆創膏貼ったよ。ダサいからヤダー!って騒いでた」
その様子が想像できるから、あたしは小さく笑う。
鳴海先輩と一緒に帰っていったというから、それも驚きだ。
「伊田ちゃんは、大丈夫?」
大丈夫かと聞かれれば、決してそうではない。
だからあたしは、曖昧に笑った。
東郷先輩の微笑みが、それに応えてくれる。
綺麗すぎて、眩しすぎて、視界が歪む。