汚れた上履きを脱いで、ふらつく足取りで、鞄を取りに教室に戻った。

既に帰り支度が済んでいた雄平とは、昇降口で別れた。

気を付けて帰れよ、という言葉を、あたしは背中で聞いた。

あたしには、雄平に優しい言葉をかけてもらう資格もない。

だから、聞こえないふりをした。

教室のドアを滑らせると、カラカラと淋しげな音が鳴る。

教室には夕日が差し込んでいて、窓枠の影が、床や机の上に格子模様を作っていた。

その影をなぞるように視線を上げると、一人の人影が、あたしの机の上に座っていることに気付いた。

驚きはしなかった。

いるような気がしていたから。