“雄ちゃん”


鳴海先輩の甘い声が、蘇る。

あたしと彼女の共通点は、同じ中学校の卒業生ということだけ。

それなのに、鳴海先輩はあたしに親切にしてくれるし、ピンチを何度も救ってくれた。

面倒なことから目をそらすことなく、他人を思いやる。

心の歪んだ沙良先輩をもかばう優しさを持っている。

あたしは、面倒事を避けることばかり考えるし、沙良先輩を心底で憎み、憐れみ、傷付けるような言葉をぶつけることしかできなかったのに。

美貌と綺麗な心を合わせ持つ、完璧な女性。

逆立ちしたって、鳴海先輩には勝てない。

あたしは鳴海先輩に憧れ、そして、この短期間で一気に好きになった。

とても、好きに。