鳴海先輩はあたしと雄平を順番に見ると、小さく微笑んで、言った。
「……雄ちゃん。伊田ちゃんのこと、お願いね」
“雄ちゃん”
美菜が怪我をしている今、それどころではないのに。
心が大きく揺さぶられる。
二人の関係は、いったい何?
「杏奈、気を付けて帰ってね」
美菜が手を振るので、あたしは力なくそれに応えた。
背を向けて歩き始めた鳴海先輩と美菜をよそに、東郷先輩が雄平を真っ直ぐに見やる。
「君、“雄ちゃん”」
雄平が、息を飲む気配がする。
「彼女のこと、ちゃんと守ってやりなよ。それから」
そこで先輩は、不敵に笑った。
ああ、また。嫌な予感がする。
「“大事にする”って意味、履き違えないように」
ビシッと人差し指を突き付けて、その後あたしに向かって意味深な微笑みを投げかけると、踵を返し、二人を追った。