東郷先輩は、あたしの前に回り、全身をくまなく確認する。
「伊田ちゃん、大丈夫?怪我してない?」
「あたしは大丈夫……」
そこで、はっと美菜を振り返る。
座り込んで、茫然とした様子で東郷先輩を見ていた。
きっと、東郷先輩に惚れ直しているところなのだろう。
「美菜ちゃん、大丈夫?」
駆け寄りたいのをぐっとこらえ、東郷先輩が美菜に手を差し伸べるのを見守る。
美菜も東郷先輩に起こしてもらう方がうれしいだろう。
「美菜、ほっぺた……」
指差すと、美菜は思い出したように赤い頬に触れ、次の瞬間、熱い物を触った時のように手を引っ込めて、顔をしかめた。
「痛ぁ……」
「ああ、こんなに腫れて……かわいい顔が台無しだよ」
東郷先輩が美菜の顔を覗き込み、乱れた髪をすくう。
美菜の顔が、腫れた頬より真っ赤になる。