「ゆっ、雄平っ……!」
もう大丈夫だから放して、と続けようとしたけれど、顔を上げたところに至近距離で目が合ってしまい、その言葉は喉の奥へと押し戻された。
視線が行き場を失い、またうつむく。
「放したくなくなる……杏奈のせいだからね」
思い詰めた声と共に、雄平は腕に力を込める。
きつく抱きしめられて、息が苦しい。
それでなくとも、心臓がドキドキ鳴るどころか、口から飛び出しそうだというのに。
周りからは雄平の体が影になっているのかもしれないけれど、それでも場所によっては見えてしまう。
こんな公衆の面前で抱きしめるなんて、雄平は恥ずかしくないの!?
「杏奈、かわいい」
余裕綽々の雄平に、恥ずかしさと抗議をまとめて一言にしてぶつける。
「ばかっ!」
雄平が笑みをこぼすと、急に体が自由になった。



