「げ!プリント間違えて出しちゃった!」


帰りのホームルームの後、美菜が突如声を上げた。

進路希望調査のプリントを回収されたのだけど、どうやら、さっき配られたばかりの、当然ながら白紙の、数学の課題のプリントを提出してしまったらしい。


「先生、今出て行ったところだよ」


そう言うと、美菜はバタバタと教室を飛び出した。それと入れ替わりに、鈴音があたしの前に立つ。


「杏奈、あたし今日委員会なんだけど、もう行かなくちゃ。もう一人の子と一緒だから、あたしは大丈夫なんだけど。杏奈はちゃんと美菜のこと待って、一緒に帰ってね」

「うん、わかった」


心配そうな鈴音を安心させるように微笑むと、鈴音はもう一人の委員の子に声をかけて、教室を後にした。