教室に戻ると同時に、チャイムが鳴った。
「杏奈、どこ行ってたの?」
後ろの席の美菜が声をかけてきた。
なんだか不機嫌そうに口を尖らせている。
その理由は、続く言葉ですぐにわかった。
「杏奈の彼氏んとこに、鳴海先輩来てたよ」
だから鳴海先輩がちょうどよく居合わせたのか、と納得した一瞬の後、あたしの心はドスンと沈んだ。
「わざわざ四階に来るなんてさ。彼女がいるってこと、知っててやってんのかなぁ」
教室に先生が入ってきたので前を向いたけれど、美菜は尚も後ろでブツブツ言っている。
そういえば、鳴海先輩は知っているのだろうか。
あたしが雄平の彼女であるということを。