「三年生の教室に来たりされると、目障りなの。あたし達、受験も控えてるし、うるさくされるとみんな迷惑するの」


頭の良さそうな彼女が言うから、真実味が増す。

東郷先輩に貸した辞書を取り返すために一度だけ三年生の教室を訪れたあの日、あたしは確かに騒がしかったかもしれない。

そして三年生の多くが受験を控えているのも事実だ。


「迷惑をかけるつもりはありませんでした。教室には特別な用事がない限り行きません」


先輩を見据えたまま、言う。

後ろに控えていた何人かは、あたしの態度が気に入らなかったのか、何か言いたげにしている。


「東郷君に近付かない、ってことは、約束できないのね」

「つきまとっているつもりはありません」