「それは……」


東郷先輩との間には、確かに何もない。

先輩がふざけて頭に手を乗せたりすることを除けば、指一本触れていない。

ただ……話していた内容が良くない。

雄平には、決して話せない。

話すためには、雄平の核心をも突かなければならなくなる。

あたしにそれが、できるだろうか。

雄平は“初めて”じゃないんだよねって、聞ける?

相手は誰か、なんて、もっと聞けない。


「あたしが好きなのは、雄平だよ」


そんな言葉で何が伝わるのだろう。

けれど雄平は、納得したふりをしてくれた。

このままじゃいけない。

でも、どうしたらいいのかも、わからない。