「杏奈、最近疲れてない?」
朝の電車の中で、心配そうに揺れる雄平の目が、あたしを見る。
雄平は、相変わらずあたしに触れない。
そのことが、雄平の初体験の相手の存在を、あたしの中でよりいっそう大きくした。
見えない存在の主張は、留まるところを知らない。
もやもやと実体のない黒い煙が、あたしの体中に充満し、体を重くしているように思えた。
それに加えて、三年生女子の問題だ。
もう、精神的にくたくただった。
後者についても、東郷先輩絡みなだけに、雄平には話していない。
だから雄平は、あたしが何か抱え込んで疲労困憊しているのだと見抜き、様子を見ているのだろう。
「ん、ちょっと寝不足なだけ。課題多くて」
「そっか。無理すんなよ」



