「ちょームカつく!!」
教室に入るなり、美菜が吠えた。
クラス中の視線が集まるけれど、本人はそれどころではないらしい。
「どうしたの?」
「三年の先輩に、すれ違いざまに『浦沢美菜うざっ』て言われたの!信じらんない!あたしが何したっていうのよ!てか、言いたいことあるなら面と向かって言えよ!」
美菜の足が椅子を蹴って、派手な音が鳴る。
「その先輩って、知ってる人?」
「知らない。あたし、三年に知り合いなんていないもん」
あたしと鈴音は顔を見合わせ、揃って首を傾げた。
確かに美菜は目立つけれど、先輩に目をつけられるような出来事も、今のところは無い。
でも、フルネームが知られている以上、その悪意は本物だ。