笑顔でいってらっしゃいって言おうと思ったのに。


そんな言葉も出て来なくて。



わたし、奥さん失格だ。




「あ、そうだこはる」


大和さんがポケットから四角い箱を取り出した。


「開けてみろよ」


言われるがまま開くと、そこにはキラキラ輝くダイヤモンドの指輪があった。



あの時の事を思い出した。


いつか買ってくれると言ってくれた大和さん。



「ちゃんと覚えてただろ?」


「大和さん」