「…ずっと前に、色葉が俺に怒ったこと、あったじゃん。『好きでもないのに、キスするな』って」
…ああ。
純くんがあんまりにも、自然にキスしてくるものだから。
好きじゃないのにそんなことされても、嬉しくないって思って。
好きだけど、そんなキスは嬉しくないって。
…思ったから。
純くんは可笑しそうに「びっくりしたよ」と笑った。
「それで、色葉は普段俺の周りにいる女子とは違うんだなって、実感したんだよ。そんときから、色葉には俺も真剣になんなきゃなって」
…純くんは、ちゃんと謝ってくれた。
私の誕生日、お家の前で。
『ごめん』って、頭下げてくれた。
「………うん」
「色葉に対して、もういい加減なことはしないって、決めてるから。その…ずっと、ひとりと真剣に付き合うのもいいかなって、思い始めたというか」
ごにょごにょと、純くんにしては珍しく口ごもる。
その姿がなんだか愛しく思えて、私はふふっと笑った。



