眠り姫はひだまりで【番外編】



女の子と純くんは二階へ上がり終えたけれど、その声はまだ聞こえてくる。

私は、足を動かした。


「…あ!ケンカしたんだったらさあ、今日はあたしと一緒に帰ろ?」


…それは…


「ーー私が、先約です……!」


はぁ、はぁと息を切らす。

階段を一気に駆け上がってきた私を、女の子と純くんは目を見開いて見つめた。


「…色葉」

「あ、彼女さんじゃーん!どしたの?」


…私の、約束だもん。

今日の放課後、純くんとデートするのは、私だもん!

私は女の子をじっと見つめて、出来るだけ強い声で、言った。


「…きょっ、今日、純くんと一緒に帰るのは、私です……!」


やっぱり、私の憧れるような『堂々とした』は出来ないけれど。

それでも、一生懸命。

私が、純くんの彼女なんだって。

お姫様に、なるんだって。

ちゃんと、彼にも他のひとにも、伝わるように。