眠り姫はひだまりで【番外編】



息を切らして別館に辿り着くと、一年の教室のある二階への階段を上がろうとして、立ち止まった。

「ねえ、純ー!」という甘ったるい声を出す、女の子が見えたのだ。


見ると、純くんが紙パックの飲み物をストローで飲みながら、不機嫌そうな顔をして階段を上がっている。

その後ろをその可愛らしい女の子が追いかけているようだった。

ふたりとも、まだ私達に気づいていない。


「ね、純!あたしチョコつくって来たんだよー!あとでもらってね?」

「……うん」

…純くんの声、すっごい低いんだけど。

不機嫌、なのかな。

…どうしてか、なんて。

期待しても、いいですか?


「も〜!なんでそんな機嫌悪いの〜?あ、例の彼女とケンカしたんでしょ?だから?」

…もう、広まってるんだ。

相変わらず、早い。


「…色葉」

ミオが後ろから、行け、と言う。

私はぎゅ、と手のひらを握りしめた。