「…そっかー…ついに女子たちも動き出しちゃったかー…」
裕也くんが、遠い目をしてそう呟く。
彼がわざわざ二組からここへやってきた本当の理由は、ミオの手作りチョコレートを受け取るためなんだけど。
この心優しいイケメンカップル(こう言うとなんか誤解を招きそう)はバレンタインのいちゃいちゃもほどほどに、私の相談にのってくれているのだ。
教室中がピンク色に染まるはずで、私もそのピンクに混ざる予定のはずで。
たぶん、私だけじゃなくクラスメイトみんながそう思ってくれていただろうけど。
期待を裏切る私のブラックオーラに、みんないちゃいちゃしながらも戸惑っているようだった。
…私のことを気にかけてくれて、ありがとう、みんな。
いいよ、存分にいちゃいちゃしちゃいなYO!
「…色葉、目が逝ってる」
「逝ってないからぁっ!」
バン!と机を叩いて椅子から立ち上がる。
昨日は泣き疲れたおかげで、家に帰ってすぐに眠りについた。
そして一晩寝てだいぶ元気を取り戻した私は、さすがとしかいいようがない。



