小さく返事をして、あたしは逃げるようにその場から立ち去った。






『付き合わない?』


そう、裕也くんから言われたのは、放課後のことだった。

彼に、買い物に付き合って欲しいと言われて。

いつも通り承諾して、ふたりで街を歩いていた。

裕也くんの買い物が終わって、あたしの希望で雑貨屋さんに入って。

あたしが、可愛らしいストラップを眺めていたときに。


『………え?』


びっくりして、思わず裕也くんの顔を見つめた。

ムードとかシチュエーションとかタイミングとか、そんなのまるでなかったけど。

真っ直ぐ、あたしを見ていた。


…その顔が真剣で、ちょっとだけ緊張してるっぽくて。


突然でびっくりして、戸惑ってもおかしくないはずなのに。

『好きだ』とも、言われてないのに。

あたしの唇は、自然に動いていた。