小さく返事をして、あたしは逃げるようにその場から立ち去った。
*
『付き合わない?』
そう、裕也くんから言われたのは、放課後のことだった。
彼に、買い物に付き合って欲しいと言われて。
いつも通り承諾して、ふたりで街を歩いていた。
裕也くんの買い物が終わって、あたしの希望で雑貨屋さんに入って。
あたしが、可愛らしいストラップを眺めていたときに。
『………え?』
びっくりして、思わず裕也くんの顔を見つめた。
ムードとかシチュエーションとかタイミングとか、そんなのまるでなかったけど。
真っ直ぐ、あたしを見ていた。
…その顔が真剣で、ちょっとだけ緊張してるっぽくて。
突然でびっくりして、戸惑ってもおかしくないはずなのに。
『好きだ』とも、言われてないのに。
あたしの唇は、自然に動いていた。



