「……どうかした?」
「…ううん、なんでもない」
けれどすぐに笑って、別の話題で話し始めようとする。
…なんか、笑顔がかたい。
どこか複雑そうな彼の表情に、お菓子を渡せて嬉しいはずのあたしの心まで、もやがかかった。
*
「あっ、ミオ!どーだった?」
教室に戻ると、色葉が明るい顔で駆け寄ってきた。
たぶん、無事にガトーショコラを渡せたのか、ってことだろう。
「…うん。美味しいって、言ってくれた」
「そっかぁ…!よかったねえ」
色葉の笑顔に、なんとなく暗くなってた気持ちが少しだけ晴れる。
…なんだろうな、この、すっきりしないかんじ。
喜んでくれた。
美味しいって言って、笑ってくれた。
…けど、なんか裕也くんの顔は、暗くって。
美味しくなかったとか、そういうことじゃないんだと思うけど。



