『……ハイ』
そんな声と共に繋がった向こう側からは、何故か軽やかな音楽が聞こえた。
「もしもし!今どこ?家!?」
『美容院』
「はっ!?」
『美容院です、先輩』
美容院?
疑問を抱きながらも、とりあえず僕はここからいちばん近い美容院に向かって、走り始めた。
心なしか低い彼女の声に、内心苦笑いが浮かぶのだけれど。
「…なんで美容院?髪切ったの?」
『切りました。もうお店出ます』
「ええっ…どっ、どこの!?」
『駅前のです』
駅前って…あそこか!
僕は方向転換して、途中の角を曲がった。
ここからいちばん近いとこではないけど、駅前にひとつ美容院があったのを覚えてる。
「いっ…今から、行くから!その辺にいてよ!?」
『…え、なんで!?』
「いいから、いて!」
ブチっと、無理矢理通話を切った。
ああもう、なんで美容院?
彼女の家だったら、前に送ったことがあるから覚えてるし、学校から割と近かったのに。
僕は息を切らしながら、駅前へと走った。
*
「………なんの御用ですか」
なんでそんな、冷ややかな目をしてるんだ…
そう言おうとしたけど、僕の肺が酸素を欲しがっているから、喋ることができない。
…てゆーか、てゆーか、さぁ。



