「…色葉が…あの頃より、ずっと大人になっててさ。僕の知らない間に、遠くにいっちゃったみたいに感じて」
徐々に、色葉の目が見開かれる。
…その、笑顔も。
ぴんと伸びた、背中も。
強い、瞳も。
遠慮も立場もまるで考えずに、僕は言った。
「……綺麗になったなって、思ったよ」
じわ、と、色葉の瞳に涙が浮かぶ。
…えっ。
今度は、僕が戸惑う番らしい。
「ごめん、嫌だった?」
「…ううん、違う…っ…」
ふるふると、指で目元を拭いながら、首を横に振る。
「…おんなじ、だよ…」
…え?
驚く僕に、色葉は涙の浮かんだ瞳を細めて、言った。
「私もね、前に思ってたの。大和が、まるで知らない男の人みたいだって。大人っぽくなってて、怖くて、どうしようって」
…そん、な。
「…うそ」
「ほんと。ふふ、おんなじだね」
…色葉、も。
僕と同じことで、悩んでた?
「…私だって、思ったよ。素敵な男の人に、なったなぁって」
…照れ臭そうに笑うその顔に、胸が締め付けられた。
僕だけじゃ、なかった。
『あの頃』に大切な想いを残していたのは、僕だけじゃなかったんだ。



