そのとき、黒板の前にいる日野くんが、葉を呼んだ。

葉が、私の前を通っていく。

…目が、合う。

……そして、逸らされる。


「………………」


…ねえ、このままで、いいの?

やっと近づけたのに。

やっと、その目に私を映してもらえたのに。

…また私は立ち止まったまんま、進まずに。

彼を遠くから見つめることしか、できない。

…それで、いいの?


「………理紗」


後ろから、さゆりの声がする。

「…また、見てるだけなの?」

わかってる、わかってるよ。

一年間だ。

一年間、彼だけを見ていたんだ。

憧れて、憧れて。

いつか彼の目にはっきりと、自分が映ったらいいなって。

みんなを幸せにするその笑顔を、どうか私に向けてくれたらって。

願って、想って、きたのに。

私はまた、葉の後ろ姿を、遠くから見つめるだけなの?