眠り姫はひだまりで【番外編】



「……葉」


彼は友達に手を振りながら、「ん?」と返事をする。

ペンを動かしながら、私は「ありがとう」と言った。


「…似顔絵、私に描かせてくれてありがとう。今日、色んな人と話せて、嬉しかった」


ぜんぶ、葉の、おかげ。

もうすぐ一年は終わっちゃうけど、最後にこんなにいい思い出ができてよかった。

カチ、とボールペンをノックして、横に置く。

書いたメッセージを読み返した。


「…俺こそ、ありがと。描いてくれて」


…君の笑顔はやっぱり、私を元気にする。





月曜日の朝、下駄箱に行くと同じクラスの男子たちがいた。

靴を履き替えているところから、今来たみたいだ。

男子のひとりが私を見て、「あ」と声を出した。


「長野さん」


…いつもだったら、声はかけられないのに。

私はびっくりして、思わず身構えた。