「……葉」
彼は友達に手を振りながら、「ん?」と返事をする。
ペンを動かしながら、私は「ありがとう」と言った。
「…似顔絵、私に描かせてくれてありがとう。今日、色んな人と話せて、嬉しかった」
ぜんぶ、葉の、おかげ。
もうすぐ一年は終わっちゃうけど、最後にこんなにいい思い出ができてよかった。
カチ、とボールペンをノックして、横に置く。
書いたメッセージを読み返した。
「…俺こそ、ありがと。描いてくれて」
…君の笑顔はやっぱり、私を元気にする。
*
月曜日の朝、下駄箱に行くと同じクラスの男子たちがいた。
靴を履き替えているところから、今来たみたいだ。
男子のひとりが私を見て、「あ」と声を出した。
「長野さん」
…いつもだったら、声はかけられないのに。
私はびっくりして、思わず身構えた。



