「色紙?」
「あー、小川、今年で離任すんのか!」
「葉、さすがだなー」
みんな笑って、ぞろぞろと教壇に置かれた色紙を囲んでいく。
私は遠目から、葉が説明するのを聞いていた。
…今日、やっと先生の似顔絵が完成した。
私としては、結構満足のいく仕上がりにはなったと思うのだけれど…どうかな。
みんな、どう思うのかな。
「色紙とかってさぁ、なんか、いいよね」
「あー、わかる!青春っぽい!」
ペンを持って順番待ちをしている女子たちが、楽しそうに話している。
…だって、葉。
みんな、楽しそうだよ。
みんなが大体書き終わったら、私もメッセージを書きに行こうかな、と思っていたら。
男子の一人が、色紙を見て言った。
「この似顔絵、描いたの誰?」
…どくん、と心臓が鳴る。
男子の声に、みんなが葉を見た。
どくん、どくんと心臓が嫌な音を立て始める。



