「…こーやって、俺が座るじゃん?」
彼が、ベランダの柵に背中を預けて、座る。
今先生からは、葉の背中しか見えない。
「んで、俺の前に理紗が座って」
言われた通り、葉の前にしゃがみ込む。
「こーすれば、先生からは理紗が見えない」
なるほど。
身を小さくして、私はしゃがみこんだ。
葉の身体の前で、携帯を操作して。
そして、葉の肩越しにカメラ部分だけ覗かせる。
「……これ、めっちゃ怖い」
「俺も怖い」
「葉は顔隠れてるから、まだいいでしょ…?携帯持ってるのも、私だし」
てゆーか先生、空ばっか見上げてて、正面顔が撮れないんだけど。
「どう?」
「…先生の、悲しそうな顔しか映らない…」
「…………」
葉は面白そうにふっと笑うと、自分の携帯を取り出した。
見つかると怖いので、私は携帯を先生に向けるのをやめる。
葉は誰かに、メールをしているようだった。



