「長野さんて、下の名前『理紗』で合ってるよね?」
「……うん…」
「そっちで呼んじゃ駄目?」
これは現実なのですか、神様。
葉が、『理紗』って。
『理紗』って。『理紗』って。
…ああヤバイ、卒倒するわ。
「…理紗?」
「ハイっ!?」
気づくと、葉の顔が目の前にあった。
訝しげに、私の顔を見ている。
私の反応に、彼はけらけら笑った。
「声裏返ってるし。理紗って、呼んでもいい?」
顔が熱くなるのを感じながら、私はこくこくと頷いた。
…私が、彼とそんなに話をしていないのに『葉』と呼ぶのには、訳がある。
入学式の日、彼は教室で、みんなの前で。
『川原葉です!苗字呼びは禁止で!俺に名前で呼んでいいよって言ってくれる人、後で自己申告お願いします!!』
…なんて、よくわからないことを言って、みんなをぽかんとさせたのだ。



