「えっ、なんで入らないの?」
「なんか…うちの高校の美術部は、油絵ばっかりするらしくて。私、油絵苦手なの。水彩が好き」
ふーん、と返事をしながらも、葉の頭の上には疑問符が浮かんでいる。
たぶん、よくわかってない。
私は水彩の、ふんわりした感じが好きなんだよね。
うちの高校の美術部の作品を見てみたけど、どれも私が求める『暖かい』かんじはなくて、『力強い』かんじだった。
描きたくないものを描いたって、良い作品はできないと思うから。
「…でも、もったいねーな。上手いのに」
彼が目を細めて、私の絵を見つめる。
どきどきしながら、「…ありがとう」と言った。
…なんか、信じられない。
こんな風に偶然、葉と会って、話せてるなんて。
今までは、遠くから見ているだけだったのに。
ずっと憧れていたその瞳に、私の絵が映ってる。
この幸運を連れて来てくれたアオバを、思わずぎゅーっと抱きしめた。



