葉は横に置かれたバケツと、私の片手にあるパレットを見て、ぱあっと顔を明るくさせた。
「長野さん、絵描くの!?」
「えっ!?う、うん!」
「見して!!」
ばっと片手を出される。
…よっ、葉に、私の絵を…!?
「…や、いやいや!下手だし!すっごく!」
「大丈夫!絶対俺より上手いから!俺の美術の才能のなさは世界一だから!」
そーゆー問題じゃないと思うんだけど!?
「いや、でも、ホントに大して上手くないし…」
「い、い、か、ら!」
そう言われましても…!
依然スケッチブックを抱きしめていると、葉はニヤリと笑って「行け!アオバー!」と柴犬に突撃を命じた。
アオバが、ワァンと鳴いて飛び跳ねる。
そして、私に向かって突っ込んできた。
「ええっ!?ちょっ………」
この河原は、川に向かって傾斜なわけで。
私は、その傾斜に逆らって立っているわけで。
当然、傾斜に沿って突撃されたら、なす術もなく後ろへ倒れこんでしまうのですが。



