…なんか、寂しいなぁ。
一度でいいから、葉と話せるチャンスが、勇気が、私にあったら。
そろそろ乾いたかな、と思って、スケッチブックを置いているところへ振り返った。
そして、私は目を見開く。
…犬だ。
ハッハッと息を切らした柴犬が、私の絵を見て…というか、くんくんとにおいを嗅いでいる。
いや、それ、食べ物じゃないよ。
絵の具の匂いがするだけだと思うんだけど。
首輪をつけてるから、どっかの飼い犬だろうけど…
私は急いで駆け寄ると、スケッチブックをすぱっと抱きしめた。
ワンちゃんが、ハッハッと息を切らして私を見上げる。
「えっと…だ、駄目だから。これ、食べ物じゃないの」
すると今度は、パレットをくんくんし始めた。
すかさずパレットも持ち上げる。
「どっ、どこから来たの?飼い主さんは…?」
まさか、迷子?



