いつの間にか彼女は俺について来ていた。
「寒くないかな?」
「…分からない」
「このパーカー、着てもいいよ」
その時渡したのが黒のパーカー。
男用だったから少しブカブカだった。
「ありがとう綺羅」
「君、名前無いんだよね?」
「うん」
「君って言うのもなんだし…名前つけていいかな?」
「うん」
「最初俺があった日が……大雨の日だったから……“レイン”ってのはどうかな?」
「レイン……」
「そう、君の名前は今日からレインだ」
「分かった」
「よろしくね、レイン」
「よろしく、綺羅」

握手するその手は俺より少し小さく真っ白い冷たい手だった。
その日からレインは用があるとき以外はフードをかぶるようになった。
レインは目を見られ怯えられるのが嫌らしい。
俺は彼女の瞳を見た誰かが彼女に惚れるのを心底恐れていた。
だから、外ではあまり顔をさらさないようにと忠告しておいた。
「ただいま、レイン」
「……夜中の三時だぞ」
「ごめんごめん、色々頼られちゃってさ。俺頼られるの大好きなんだ」
「押し付けられてるだけじゃないか?」
「そうかな?でも俺はそれでもいい、誰かに頼られるっていう優越感に浸るのが俺は好きなんだよ♪」
「変な奴だ」
「よく言われるよ」
「それなら、なんでも屋をやればいい」
「え?」
「なんでも依頼してくれたらこなすっていうの、綺羅にあってると思う。」
「なんでも屋………いいね!!それっ!!」
「でも、突発的な思い付きだ」
「いいよ!!それでも!!俺とレインと協力してさ!!」
「私もか?」
「そう!愛の力で!!」


これが、“なんでも屋”が誕生した瞬間だ。
実に単純だった。