トスン、とあたしを押し倒し、上から見下ろした彼は綺麗だった。
彼の綺麗な瞳には無表情のあたしが写っている。
『名前は?』
「ナイショ」
『なぜ、』
「理由はないよ」
『じゃあ、田中君にしよう』
あたしが彼の名前を勝手に決めると、彼は少し驚いた顔をして、それからクスクスと笑い出した。
『何を笑っているの、』
笑いは止まらない。
「俺の友達にもね、俺のことを田中って呼ぶ奴がいるんだよ。そいつは俺の本名知ってるのに、なかなか覚えてくれないんだ、」
その人の話をする田中君(仮)はとても楽しそう。よほど仲がいいんだな。
と、ピタリと楽しそうな音がやんだ。

