あたしより先に中に入っていた彼がこちらを振り返った。
後ろ手にドアを締めたあたしはその光景に息を呑んだ。
後ろの月明かりの中、なんとも言えない空気を纏った彼は、こちらからはどんな表情をしているかわからない。
ゆっくりと腕をこちらへ伸ばした彼は、あたしの腕を掴むとベッドに誘導した。
ばさりとベッドに乗り上がり、座った。
「名前は?」
『…ゆりあ』
「ゆりあ、漢字は?」
『花の百合にアジアの亜で百合亜』
「そう、いい名前。じゃあゆりあ、今夜はよろしくね」
彼の綺麗な顔には見事な笑みが浮かんでいて、人を魅了させる。

