「う、美味い!!」
「だねだね!!この鯖とか最高だよ!!」
「初めて食べた…この…」
「それは紫蘇のてんぷらだよ」
「紫蘇…」
「美味しいよね、紫蘇てんぷら」
「あ、あぁ…」
鮮やかな緑の紫蘇をカラッと揚げたてんぷらをレインは頬張った。
「美味い…っ」
今までにないぐらいのレインの笑顔だ。
綺羅は視線を不自然に逸らしながらレインの顔を盗み見していた。
「俺、温泉行く…、レインは待ってて」
「あぁ、私は部屋のお風呂にでも入ろう」
「そうして……じゃなきゃ制御できないっ」
「え?」
「い、いや!なんでもない!あー、お腹一杯だぁ!」
「??」
綺羅の不自然な行動に少し疑問を感じたが…
レインは目の前の豪華な料理を必死に頬張った。


コンコンッ


不意に襖を誰かが叩く。



「!?だ、誰だ!!」
レインは立ち上がり構える。
「き、綺羅?」
「やぁ」
目の前にはさっき出て行ったはずの綺羅。
しかし、何か……違う。
メガネをしていないし、洋服も違う。
だ、誰だ…コイツ
「そんな怖い顔しないで、レインさん」
「誰だ!!お前!!」
「何ていえばいいかなぁ……僕、綺羅兄さんの弟の沙羅って言うんだ」
「は、はぁ?」
「聞いてない?兄さんから弟が居るって話」
「一言も聞いてない…」
「そっか~……。」
よく見れば、綺羅とそっくり…
でも、コイツは垂れ目で綺羅は少し吊り目。
よくよく見れば違いがある…。
ほくろの位置も反対。
「ねぇ、兄さんが来るまで遊ぼうよレインさん」
「は、はぁ?」
「兄さんが家を飛び出してまで守る女の人に興味があるんだ」
「家を飛び出す?」
「要するに、兄さんがとーっても愛してる君には興味があるんだ」
「!?」

握っていたお箸が宙を舞う。
背中が勢いよく畳にあたる。