まだ空は暗く、夜明け前。
レイン達は出発した。
「とりあえず、車をレンタルしてきました~♪」
「怖いぐらいの用意周到だな」
「もっと褒めてくれよ」
「はいはい」
「よし、じゃあ新婚旅行へ出発~!!」
「…もうツッこまないぞ」
「ヒドーイ」
車で四時間半。
山中にある少し古びていて広い旅館。
外見は日本風で明治時代からある老舗旅館らしい。
これも全部綺羅情報である。
アイツは情報屋も向いているって程に情報を集めてくる。
着替えようの洋服を詰め込んだバックを片手に旅館に入った。
「ごめんくださーい」
「なんか違わないか?」
「え、この場合は…すみませーん!女将さーん!!」
「どっちでもいいがな…」
旅館の受付には誰もいないし、旅館内も何だか暗いし…
“廃旅館”っていう名前がふさわしい。
「あ、すみませんっ……旅館『サクラサキ』へようこそ」
奥の方から初老の女将さんが出てきた。
「予約をしていた者ですが…」
「あ、綺羅様とレイン様ですね。履物をそちらへどうぞ」
「は、はい」
床が軋み今にも抜け落ちそうだ。
みる限り、自分たち以外のお客はいない。
「桜の間にございます、ご夕食のほうは午後八時から、大浴場はいつでも入れますので、あとお部屋にも温泉が付いておりますのでごゆっくり」
「は、はい」
所々、桜の花びらの絵が描かれている部屋は眺めも最高だった。
「レイン!レイン!みてみて!紅葉だよ!紅葉!」
「……キレイ」