とりあえずホッとしていた。


あと1曲、無事に歌い終われば…。


そう思っていた時だった。


相原君が急に私の顔を見て、ニヤッと笑った。


「次の曲なんやけど…。

次はバラードやねん。

ちょっとスローテンポやけど、この大学祭のラストを飾るのにふさわしいと俺は思ってんねん」


え…?


バラード?


最後の曲は、バラードじゃないよ?相原君。


一体、何を言っているの?


「曲名は…。

Hold me once again…」


え…?


そ、それって…!


キョウセイが私に贈ってくれた曲に、私が勝手に歌詞をつけたものだよ。


なんで…?


『拓真!お前、何言ってんだよ。それは、一度も合わせたことないだろ?』


後ろから小山君が叫ぶ。


『ギター1本で出来るやろ?』


相原君がマイクを通さずに言った。


『キョウセイ…。

この曲を演奏したかったんやろ?

最後の大学祭や。

このバンドはお前がいてへんかったら、成り立たへん。

お前が1番やりたかった曲をやらせたる。

里桜ちゃんもええな?

歌詞、覚えてるよな?

キョウセイを想って、書いた歌詞なんやから…』


『相原君…』


困惑した私とキョウセイだったけど、キョウセイは覚悟を決めたのか、足元にあるエフェクターをいじり始めた。


私はゴクンと息を飲んだ。


「じゃあ、最後の曲。

聴いてください。


Hold me once again…」