もう一度抱いて

「朝田さんて、自分のことが好きやないやろ?」


俺の言った言葉に、ぎょっとする朝田さん。


「ど…うしから?考えたことないわ…」


彼女は机に目を伏せながら、コーヒーを口にした。


「どうせ、私には良い友達がいない。

どうせ、私は愛されない。

どうせ、私は里桜にはかなわない。

いつもいつも頭ん中で、そないなこと言うてへん?」


「言ってないわよ…」


眉を曲げて、苦笑いをする朝田さん。


「ほんなら、朝田さん。

自分の好きなとこ、いくつ言える?」


「え…?」


「言うてみて」


俺がにんまり笑うと、彼女は目を泳がせながら、真剣に考え始めた。


「えっと…」


そない考えな浮かばんのんかいっ。


「遠慮はいらへんで。自分のこういうとこが好きって少しはあるやろ?」


「えー…?」


うーん、うーんと本気で悩む朝田さん。


こいつは思ってたより、かなり重症やな。


やっぱり俺の勘はよう当たる…。


「あんなあ…」


「何よ」


「そこやねん」


「えっ?」




「朝田さんと里桜ちゃんの違いは、そこやねん」